サン・パトリニャーノ食堂のボロネーゼ

サン・パトリニャーノ食堂のボロネーゼ

もうすぐ5月5日、こどもの日。
お子さんたちの大好物と言えばハンバーグ・カレー・スパゲティが定番ですが、中でもミートソースのスパゲティは多くのこどもたちが喜んで食べてくれるメニューの一つ。

今回は、イタリア北部エミリア・ロマーニャ州にあるワイナリー「サン・パトリニャーノ」の担当さんから共有いただいた本格ミートソースのレシピをご紹介します。エミリア・ロマーニャの州都ボローニャ発祥、ボロネーゼソースです。



薬物の依存に立ち向かう若者たちの自立を支援する社会的なプロジェクトとして設立されたサン・パトニャーノでは、専門家による技術指導のもと、若者たちがブドウの栽培、手入れ、収穫からワインの醸造までを行います。ワイン造りの他にも、生ハムや乳製品の加工、プロダクトデザインなど様々な事業があり、昼夜働く彼らの毎日を支えるのが、大きな食堂。

実はこの食堂の運営自体も、サン・パトリニャーノのプログラムのひとつです。800名もの若者たちが朝昼晩の食事を共にし絆を深める空間であると同時に、調理やサービスに関する一流の技術を身に着けるための学び舎でもあるのです。


平日はセルフサービス形式のため各自トレーを持って列に並び食事をピックアップしていきますが、休息日である日曜日はレストランのように全員が木製のロングテーブルに着席しているところへ料理が提供されていきます。そして、料理が運ばれる前にはしばしの黙祷の時間があり、厳かな空気の中で故郷の家族や大切な人のこと、自分の過去、未来。それぞれが思い思いの事柄に心を巡らせたのち、安らぐ休日の食事が始まります。

今回ご紹介するのは、このサン・パトリニャーノの食堂で実際に調理されているボロネーゼソースのレシピです。じっくりコトコト煮込んでみました。


≪材料(ボロネーゼソース)≫
牛肉300g ※できれば粗びき
裏ごしトマト(トマト缶でも代用可)300g
にんじん(みじん切り)1/2本
セロリの茎(みじん切り)1/2本
たまねぎ(みじん切り)1/4個
赤ワイン100ml ※白でもOK
生ベーコン150g
エキストラバージンオリーブオイル小さじ1
塩・胡椒お好みで
ベジタブルブロス適宜

≪材料(ベジタブルブロス)≫
にんじん1/2本
セロリの葉と茎約1/2
玉ねぎ1/2個
月桂樹の葉1枚
にんにく1片

本場のボロネーゼソース作りは、ベジタブルブロスこと野菜のお出汁取りから始まります。



・玉ねぎ、にんじんの皮を剥いてザク切り、皮も一緒に鍋へ。
・セロリはボロネーゼ用の分量をとりわけ、余った葉と茎の部分をザクザク。
・にんにく、月桂樹の葉、1Lの水と共に強火にかけ沸騰したら弱火に。

ソースを2時間煮込む間に、都度注ぎ足す水分に使います。傍らでコトコトさせながら、他の準備を進めましょう。ちなみにお水でもOKです!その場合は次の工程から始めます。



・生ベーコンを刻み鍋にオリーブオイルを熱し炒めます。

おつまみ用の短冊状になっているものを使用しました。サイズはまばらでもよいので、包丁でギュウギュウと切り刻みます。弾力があってそのまま食べても美味しい生ベーコンを刻んで加熱するという贅沢!

・ベーコンがよく茶色くなってから刻み野菜を加え、5~6分加熱します。

ベーコンの香ばしい焦げが旨味のもとになります。野菜から出てくる水分で焦げ付きが落ちやすくなるので、鍋肌の旨味を野菜に移すべくお鍋を掃除するように炒めます。

・肉の水分や旨味を密封するため、時間をかけて挽き肉を焼きます。茶色く焼き色が付くまでが目安です。

鍋の底はすでに具材で隠れていためフライパンを使って焼きました。肉肉しい食感に仕上げることを目指し、この段階では崩さず大きく塊のままで。細挽きの場合はバラバラになりやすいのでしっかり押し付けましょう。

・挽き肉に赤ワインを注いで強火にし、アルコールを飛ばします。
・ワインの汁気でフライパンにほんのりついた焦げをこそげてから、フライパンの中身を鍋に入れ挽き肉をほぐしながら混ぜ、トマトの裏ごしを加えます。



そうこうしているうち、すっかり煮出されたベジタブルブロス。網で漉したら絵に描いたような黄金色に…!1Lの水と野菜で煮込み始め、およそ650mlほどのブロスができました。出汁を取ったあとの野菜は、ミキサー等ですりつぶしてポタージュにしたり、または刻んでボロネーゼのお鍋に戻して一緒に煮込んでしまうのもよさそうです。

・鍋にベジタブルブロスを1、2玉分加えて混ぜ、全体の質感を緩めます。
・少しだけずらして蓋をし、弱火で2時間煮込みます。

煮込む間は20~30分ごとに中の様子をチェックし、水分が抜けていくので都度ベジタブルブロスを追加して伸ばします。筆者はトータル5玉分入れましたが、水分の蒸発具合はお使いの鍋の容量等でも変わってくるので、ご参考までに。


2時間煮込むと、このような感じに…!頂いたレシピに「塩はくれぐれも煮込んだ後で味見をしてから入れるように」との注意点がある通り、調味料は一切使っていないにもかかわらず、もうばっちり味が仕上がっていて驚きます。生ベーコンとトマトの裏ごしに入っていた塩分のみで十分事足りてしまい、追加に及ばずでしたが、お好みで調整してください。パスタは幅広のフェットゥッチェ(フェットチーネ、タリアテッレ)と合わせます。

出来上がりました!せっかくなので粉チーズ等は使用せず、ボロネーゼとパスタを豪快に混ぜ込んでいただきます。
野菜、牛肉、ベーコンの旨味がギュッと凝縮されたボロネーゼは肉肉しい食感で食べ応えあり、みじん切りの野菜までしっかり旨味が入っているのがよくわかります。合わせたワインはサン・パトリニャーノのオラ。オラも同じく旨味のあるワインなので、非常に良く合います。

今回は2時間煮込みましたがこれはまだ序の口で、その他参考にしたレシピによると、だいたい2時間~6時間煮込むそうです。朝からお母さんが調理し始めたものを夕食にしたり、もしくは1日、2日寝かせるなど、より美味しく食べるためのルールはさまざま。またアレンジ法も様々あり、生クリームを少量加えてクリーミーに仕上げたり、生ベーコンの代わりに燻製ベーコンを使用する(その場合「Bolognese Fumè=燻されたボロネーゼ」になります)などなど。

ゴールデンウィークがいよいよやってきます。ゆっくりできるおうちデーに、入魂のボロネーゼはいかがでしょうか。どうぞお試しください。